本年のインフルエンザワクチン接種について

 今年度のインフルエンザ予防接種は、「国の事業として行う接種」だけだった一昨年や、「国の事業として行う接種」と「任意に医療機関で受ける接種」と2つの制度があった昨年と異なって、3年前と同様に任意に医療機関で受ける接種のみとなりました。この数年の行政の非合理的な対応には正直なところため息が出てしまいそうですが、接種を希望される方は落ち着いて来院して下さい。

尚、「注射の効力が持続する期間」は、一昨年までは「およそ3ヶ月」と記載されていたのですが、なぜか、本年は「およそ5ヶ月」と延長されて記載されています。根拠は全く不明です。どちらにしても、効果があるか否かは個人差が大きく、予想することは不可能です。「絶対」という効果を期待することは、もともと不可能です。ただし、流行する時期に確実な効果を期待する上では、2回の接種を受けることは多くの方には役に立ちます。また、流行のピークは2月であることが多いことを考慮し、3ヶ月しか効果がない場合を想定した場合に、今、急激な流行が懸念されていないのであれば、11月末から12月前半に接種を受けることが最も合理的と思われます。

 接種料金は、武蔵野・三鷹在住の方で65歳以上の方は1回のみの接種で2,500円となります。64歳以下の方で当院通院中の方は、大人は3,510円、予備校生と高校生以下の方は2,930円、その他の方は、大人は4,050円、予備校生と高校生以下の方は3,510円となります。

 

インフルエンザワクチン接種に際して、しばしば受けるご質問と答え

   どんな副作用があるの??

 実際にどういった副作用が生じるのかは、因果関係を含めると実は明瞭ではありません。行政からの資料によれば、平成19年度〜20年度の2年間に季節性インフルエンザワクチンの接種を受けた約8,904万人のうち、死亡や後遺症が残るなどの重篤な副作用が報告された事例は242人で、このうち6人が死亡(但し、接種と明らかな関連なし)の事例とのことです。また、平成21年度の新型インフルエンザ国産ワクチンの接種を受けた約2,283万人のうち、接種との関連の有無にかかわらず報告された数としては、死亡や後遺症が残るなどの重篤な副作用が報告された事例は、416人で、このうち133人が死亡の事例とのことです。また、接種との関連があるとして報告された数としては、死亡や後遺症が残るなどの重篤な副作用が報告された事例は、163人で、このうち5人が死亡の事例とのことです。

 

   受けたほうがいいの?受けないほうがいいの??

 インフルエンザの予防注射については、その効果は厳密には判っていません。多くの研究者が分析をしていますが、他の終生免疫を得られるような定期接種などと違って、明確な答えは出ていないようです。一般論としては、インフルエンザという病気に対しての抵抗力を得られるわけですから、予防注射の効果が得られた場合は、インフルエンザに罹る可能性が低くなるか、罹っても症状が軽く済むことになります。大多数の人は、注射を受けることで効果を得られるものと考えられてはいますが、注射により効果を得られたかどうかを検査などで知ることは実際には不可能であり、効果を得られた人の割合も実のところは判りません。  

一方で、副作用を心配して、受けないほうが良いと主張する人も少なからずいます。しかし、接種による副作用かどうかの評価自体が、多くの他の因子の影響を除外できないことから困難であり、表面化していない副作用の事例も存在し得ます。ということで、現状では、これら効果と副作用との意見をもとに、個人個人で決めていただく以外にはありません。

ただ、日本人は、行政で仕事をする人も含めてテレビや新聞などのメディアに煽られ易いと思います。例として、平成21年の新型インフルエンザにおける対応を挙げます。春頃に新型インフルエンザの出現を知り、当初は未知の疾患に対する恐怖に包まれたものの、夏〜秋と経過するにつれ、罹患してもかなり軽い症状で済むことが判ってきました。他の先進諸国が次々と通常の対応に戻っていく中で、日本は秋が深まっても相変わらずの対応でした。それどころか、新型インフルエンザに罹患した後に亡くなった患者さんが出るたびに、しかも、新型インフルエンザが死亡の直接的な原因ではない多くの事例を含めて、行政は記者会見を繰り返すなどした結果、国民の不安は増しました。もちろん、患者さんが亡くなることは不幸で悲しいことです。しかし、人が生き物である以上、いつか亡くなることは必然です。「新型インフルエンザに罹った人が亡くなった」という発表を行いそれだけが報道されると、聞いた人が不安になるのは当然のことです。

ところが、一方で、既知のインフルエンザだけでも、はるかに多くの方が亡くなっている事実がありました。平成21年から22年にかけて、死亡との因果関係の有無に関らず新型インフルエンザに罹った人で亡くなった方は、この1年余の期間に202人いたそうです。ところが、季節性と呼ばれるインフルエンザでは、インフルエンザによる直接の死者だけで、平成7年から21年の15年間で11,402人(年平均760人)もの方が日本で亡くなっています。インフルエンザに罹った後、他の因子によって亡くなった方を含めたら、年に3,000〜4,000人程度、あるいはそれ以上の方が亡くなっていると容易に推測できるのです。新型インフルエンザの発表や報道を、こういった事実の情報伝達と共に行っていたら、もっと合理的に行動することができたかもしれません。

 

   いつ受けたらいいのですか?

 新型、季節性にかかわらず、インフルエンザは1年を通して罹る可能性のある疾患であることがわかってきました。ただ、気温が下がり乾燥する冬に患者さんが多いことは明らかです。一方、ワクチンの有効期間は3〜4ヶ月ということですから、何度も受けるのでなければ、発症の多い1月〜3月前半までの間、有効であることを期待できるように、11月下旬から12月に接種することが合理的かもしれません。ただ、注射の効果があるかどうかを含めて個人差があるわけで、それを知る術がないことは前述の通りです。

 

   注射は1回ですか?2回ですか?どちらがいいの??

 インフルエンザワクチンの接種では、大多数の人は、注射を受けることで効果を得るものと考えられてはいますが、注射により効果を得られたかどうかを検査などで知ることは実際には不可能であり、効果を得られた人の割合も実のところは判りません。一方で、一般的に予防注射の効果は、回数を増やすことで増強されることがわかっています。従って、効果を得られたかどうかは判らなくてもよいから少しでも効果を多く期待したいという場合には、2回受けることも合理的な選択と思います。その場合は、2週間から4週間の間隔が推奨されています。

 小児の場合は、予防接種の効果が低いという意見があり、小児科の先生は2回の接種を推奨しています。ただ、この場合も当然ながら個人差があって、それぞれの人について1回で効果を得られたかどうか、あるいは、2回受けたから大丈夫かどうかを知ることは実際には不可能であることには変わりありません。薬剤の説明書の中では、1歳〜12歳の方は2回受けることになっています。

 

   従来のワクチン接種と、新型のワクチン接種と2回受けるのですか?

 平成23年用以降に用意され販売されているワクチンは、新型と季節性と呼ばれる従来型2種を合わせて1つの注射液とした3つの型に有効なものです。別々に受ける必要はありません。